2012年06月08日

戦う女性たち



1番ホール注目のティーショット。

まずは、全美貞からティオフした。

最終組という事もあり、ティーイングラウンドには多くのギャラリーが詰め掛けている。
大体、50、60人くらいは居るだろうか? 
全ての眼が、トーナメントリーダーのティーショットに注目していた。

張り裂けそうな緊張感。そして、異様に静まり返っている1番ホール。
その全てが、ピンと張りつめた空気に包まれている。
そんな中で彼女は、全く危なげのないショット放って行った。

「ナイスショット!」
と、大きな歓声も上がっていた。


続いて、イ・チヒが打った。

ボールをセットし、一連のルーティンからアドレスに入ってターゲットを確認する。
アドレスの向きとフェイスの向きを後ろから確認しているキャディーも一言「OK」と呟いて、
そして真っ直ぐなボールを空に打ち出して行った。

「ナイスショット!!」

さらに大きな歓声がギャラリーから上がっている。


それにしても、
彼女らは「プレッシャー」と言うものを感じていないのだろうか?

立ち姿、ルーティン、アドレス、スイングなど、
その動作のどこを観ても特に緊張している様子はないし、
全身に力がみなぎっているという事もない。

逆に、
「こんな状態の中で、どうしてそんなにしなやかなスイングが出来ちゃうの?」
と尋ねたいくらいの動きをしていた。

俺なんかいつも、
「どうしてそんなにコワばったスイングしちゃうの?」
と聞かれる事が多いって言うのに。


二人が繰り出したぶっ飛びのボールに俺は驚きながら、
最後の選手「宋ボベ」のティーショットに目を向けた。

初日、二日目と、スコアを伸ばしてきた彼女。
この上がり調子の中で、一体どんなプレーをしていくのか?
きっと誰もが注目しているはずだ。


彼女も、淡々とティーショットの準備に入った。
他の二人と同様に、全く危なげないショットでフェアウェイにボールを落としてくる事だろう。

ギャラリーの視線もさらに集まって来る中、
第1打目を放った。


「ナイスショッー!!」
彼女が打ち出した瞬間に、大きな声でギャラリーが叫んだ。

しかしそのボールは、
どう見ても真っ直ぐ飛び出していない。

「おい、そこのオヤジ。今のはちょっと違うだろ?」
と俺でさえ思わずツッコミたくなったが、
やはりボールは左のラフに消えて行った。

だが彼女は、
顔色一つ変えずに直ぐにその地点に向かって歩き出した。

その顔も、特に「しまった!」という表情ではない。
まるで、何事も無かったという感じだ。

たぶん心の中は、
既に「第2打目をどう打つか?」に移っているのだろう。

俺も、プレーヤーに置いていかれるまいと早足で追いかけて行ったが、
実はこんな事を考えていた。


「いい当たりじゃないのに、「ナイスショット!」と叫ばれる。
しかも、あれだけ大勢のギャラリーが取り囲んでいる中、
常に集中力を保ち続ける精神力って、一体どれほどのモノなんだろうか・・・?」



優勝を掛けて戦っている最終組。
只でさえその一打一打が重要になってくる中で、
自分のプレーに徹しなけらばならない彼女たち。

集中したくても、周りの状況がそうさせない場合もあるし、
必要以上のプレッシャーも掛けられてしまう時もある。

それが、18ホール6時間以上も続くだなんて・・・。

生で見るトーナメント会場には、
テレビで見るような華やかな世界は全く存在していない。

あるのはただ、女たちの戦いだけだった。


この1番ホール。
全美貞がバーディー、イ・チヒがパー、
そして、宋ボベがボギーだった。

すでに大きく動き出したスコア。

しかし、次の2番ホールでは、
さらに信じられない出来事が起きて行くのであった・・・。


To be contiuned.





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Posted by アマゴルファー・むら at 17:00│Comments(2)プロゴルフ
この記事へのコメント
プロの精神力の強さはすごいですね。
僕らアマチアは一喜一憂する楽しいゴルフをすれば良いですよね(笑)
Posted by ごんぼ at 2012年06月11日 12:37
ですよね~、ごんぼさん。
プロに憧れますが、プロじゃなくて良かったとも思いました。
大変ですよ、あの職業は!(笑)
Posted by アマゴルファー・むらアマゴルファー・むら at 2012年06月11日 21:09
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