秘密兵器登場
「じゃあ今日も、
スイングの撮影からしますね。」
と、山口プロから声が掛かる。
ゴルフスクールに通うのも、これで三回目。
今日も、いつもの流れでレッスンが始まる。
今まで、一体何が悪くてどんなスイングになっていたのか
まるで分からなかったが、
このスイング解析機で自分のスイングを見るようになってからは、
「えっ。ウソッ。」
「なんじゃ、コレはっ。」
「まさか、これが自分なんて!?」
と驚きの連続と共に明らかになってきた。
あまりにも、自分のイメージとかけ離れた現実。
きっと、心臓の弱い人なら、
ショック症状を起こしてその場で倒れてしまうかもしれない。
「ウッ。胸が・・・。」バタン。
と。
どうやら俺は、
神経
だけは図太く出来ているらしい。
ありがとう。神さま。
こんな俺に作ってくれて。
「うん。大分よくなってきてますね~。」
撮影したスイング映像を見ながら、プロが言った。
そうだろう。
あれから毎晩のように、
「V字ドリル」や「ショルダーターン」を練習してきたからな。
「テークバックでは、右サイドにしっかり移動出来るようになったし、
シャフトも寝ないで下りて来てますしね。」
それは、かなり意識して練習したさ。
「上げたら下ろすだけ。上げて下ろす」と。
「うん。でも・・・。」
うん・・・?でも・・・?
何ですかっ?
「やっぱり。まだ、すくい打ちの感じがありますね。」
ガビーン!
まだ、直っていないのか!?
あれだけ練習したと言うのにっ。
今年の夏は、寒い夜だった。
梅雨明け宣言が終わったと言うのに、
毎日、毎日雨が降る。
夏らしい、暑い星の輝く日はほとんどなく、
シトシトジメジメ。
夏の天体観測や、
「あっ見て!流れ星よ。」と、
甘いひと時も楽しむことが出来ない夜。
「夏の夜」と言う表現より、
「梅雨の夜」といった方がふさわしい日々だった。
そんな中でも、
濡れた道路の上、ほのかに明るい街灯の下、
「俺は、むらヤ。アマゴルファーむらヤ~!」と、
あれだけ練習してきたと言うのにっ。
上達してないんですか?
「分かりました。
今日は、身体を使うスイングを練習をしましょう。」
うん?
身体を使うスイング?
「どうしても、腕だけを振ってボールを打ちに行っちゃうんですよ。
だから、力も入ってしまうしスイングも安定しないんです。」
確かに。
このヤロー!って言うくらいに、力いっぱい振っていますよ。
あたし。
「じゃあ、コレを使ってスイングしてみましょう。」
何ですか?このボール。
コレをどうするの?
「これを腕に挟んで、それで普通にスイングしてみてください。
こうやって。」
と言いながら、プロが見本をみせてくれた。
バチン。びゅーーー。
何番アイアンを使っているのだろうか?
スペースシャトルのように飛び出していったボールは、
上段に張ってあったネットに当てって落ちた。
すげェ・・・。
ボールを挟んでいたって、いつもと変わらないスイングが出来るんだ。
そーか、そーか。
さっそく俺も試してみた。
ボールを腕に挟んで・・・
あれ?
ただ挟むだけじゃ、ボールが落ちちゃうな。
ちょっと、両脇を締めるようにしなきゃダメだな。
こうか?
おっ。
これは、
「だっちゅーの!」スタイルじゃん!
懐かしいなぁ~。
うん。
ヨシ。これで普通にスイングするっと。
あれ~?
腕も上がらないし、身体も回りませ~ん。
テークバックなんか、ムリムリ。
そんでもって、
ボールなんか
打てませ~ん。
というより、普通にスイング出来なんですけどっ。コレ。
もう、
だっちゅーの!
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