順調

アマゴルファー・むら

2014年12月16日 21:04

俺の第一打目のティーショットはまずまずだった。

少し右には飛び出して行ったものの
2打目でグリーンが狙える所にボールが残ってる。
曲り幅もほとんどない、右への「プッシュアウト」だった。

よしっ、これなら大丈夫だ!」

俺は拳を握って、
ラストラウンドの手応えを全身で感じていた。

問題のドライバーショットが「曲がらない球筋」であれば、
こんな俺でもスコアメイキングしていくことが出来る。

「とにかくボールがコース内に残っていれば、大叩きする可能性は減る。」

これが、今シーズン数々のラウンドこなして導き出した、
俺の「スコアアップの方程式」なのだ!!



第2打目のイメージを終えた俺は、
初ゴルフを迎えた女子社員のスイングに目を移した。

彼女がプレーする場所は、「シニアレディースティー」
そう、レディースティーよりまだ先に位置しているティーグラウンドだ。

もちろん年齢的には「シニア」ではない。
どちらかと言えば「ジュニア」の方が近いうら若き女性だ。
だが、「生まれて初めてのゴルフ」、「前日に初めてクラブを握った」という事を考えると「特別ルール」を採用せざるを得ない。

・ティーグラウンドは「シニアレディースティー」
・空振りはスイング回数に数えない
・バンカーは無し
・パットは4回までで終了


といういくつかの「特別ルール」を設けて、
彼女が無事にホールアウト出来るように取り計らっていた。

ティーアップのやり方がよく分からない彼女には、
同伴者の男性社員が代りにティーアップをしてあげて、
その後のプレー進行は俺が面倒を見るという「暗黙の了解」が既に出来上がっていたので、
俺は、彼女のキャディーバックから3本クラブを取り出して、
次のショットの準備をしていた。


彼女の第一打目。
当然ながら空振りだった

ボールの3倍はあるドでかいヘッドが、
地面に止まって全く動くことがないボールにカスる事さえ出来ない。

だた止まっているボールを打つだけの「単純なスポーツ」が、
どれほど難しいことなのかの一端をきっと感じたことだろう。

俺は彼女に素振りをさせた。

「ちょっと、素振りをしてごらん。
クラブをしっかり振り切る事だけを考えて
思いっきりね!」


言われた通りにスイングしてみるものの、
「ボールに当てる」と言う意識からか
スイングが小さく中途半端なものになってしまっている彼女。

「ボールを飛ばそうとか、ヘッドにちゃんと当てようなんて事は考えずに、
とにかくクラブをしっかり最後まで振り切る事だけを意識して素振りしてみてよ。
自分の振りやすいやり方でイイからさ!」


彼女のスイングしやすい方法で2、3回素振りをさせてから、
再び第1打目を打ってもらった。

カキン!

ボールは低い弾道ながらも、
コロコロ前に飛んで行ったのだだった。





あっ、当たった!
と小さく喜んでいた彼女に
持っていた7番アイアンを手渡して
「これからは全て同じルーティンでプレーする」とアドバイスした俺。
それは、この3つだった。

・目標を確認する
・ボールが前へ飛んで行くイメージをしながら一回素振り。
・しっかり最後までクラブを振り切る。




何とか、前半のプレーを終了した彼女。
スコアは「84打」で収まっていた。

これは初ラウンドのスコアとしては上出来過ぎる結果だと思うが、
しかし、やっぱりパットには苦戦していた。

「パットは4回までで終了」というルールはあったが、
4回でカップインしたホールは一度も無かった。

グリーンの傾斜やボールの転がるラインは分からないとしても
パットの距離感「タッチは感性」だと思っている俺は、
あえて彼女には何のアドバイスもしないで
ただパッティングを見守っていた。

最初の頃は、強く打ち過ぎて全てカップオーバーのパッティング。
続く2打目は弱すぎるタッチで逆にショート。
3打目では、強かったり弱かったりとバラバラで、
なかなかカップにボールが近寄らないことが多かった。

だが、ホールを重ねるごとに徐々に身体の感覚にタッチが合ってきて、
なんと6ホール目では遂に「2パットでカップイン」するまでに成長していたのだった。

彼女の隣では常に
「イイねー!やるじゃん!その調子!!
と連発していた俺だが、
肝心な自分のプレーは「50打(17パット)」というスコアだった。


「このスコアじゃ、後半のプレーは「特別作戦実行」だな?」

このラストラウンドでさらに「自己ベスト更新!」して、
有終の美を飾りシーズンオフに入ると企てていた俺は、
「後半は自分のプレーに徹する!」という
初心者ほったらかしというスペシャルミッションを発動して
再びプレーを再開させたのであった・・・。


To be continued.

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