変化
緊張の第一打。
今までのスライスが
嘘のように消えて無くなった事に気分を良くして、
俺は第2打目地点に軽快に足を進めて行った。
やはり、今までの練習の成果が顔を出し始めたって事だろうか?
俺は、歩きながら自分のティーショットを思い出し、
その一打の中で
「何が今までと違うのか?」を考えていた。
「スイングプレーンか?」
「スイングリズムか?それともテンポか?」
「ドライバーへ対する不安と恐怖の意識だろうか・・・?」
確かに、その全てにおいて、
今までのショットとは全く違う意識を持っていたが、
「まさしくコレだ!」と言い切れる強さは沸いてはいない。
じゃあ何が、俺のドライバーショットを
劇的に変化させたと言うのだろうか?
「やっぱり、アレか・・・?」
今、俺の中で、
「この方法ならボールが曲がる事はない!」
と確信を持てる事はただ一つ。
それは、
「ハーフスイングでショットする」
という事だ。
多くのゴルファーが常に夢を見て憧れる
「ドラコンシングルへの道」
そう、ドライバーで300ヤードをぶっ放し、
ホールアウトすれば常に70台のスコアを出す
「ドラコンシングル」へ突き進むと宣言して以来、
俺のスイングは常に万振りの
「アマゴルファー・万太郎」になっていた。
ウッドでもアイアンでもウェッジでも、
ヘッドスピードの速さを1秒でも速くする為に一切の手加減無しで
思いっきりクラブを振り切る事に命を燃やしてきた。
気に入らない事があれば直ぐに人に殴りかかり、
ハチマキを巻いて単車にまたがり爆音と共に街中の国道を突っ走り、
子供をおんぶしたまま会社に出勤して上司も役員も関係なく自分流儀を突き通す。
常に熱き硬派の男
「アマゴルファー・万太郎」としてポジションを手に入れていたが、しかし、その反動も大きかったのは言うまでも無い。
そこで、
俺が悩みに悩んで考えに考え抜いて選んだ方法が、
安全確実の
「ハーフショット」。
飛距離を捨てて
方向性に生きる道だったのである。
アウトコースの一番、ロングホールをダボ。
OBも無く、池ポチャもなく、
俺としては上々の滑り出しだった。
続くホールもティーショットのスライスが出現する事も無く、
安全確実のプレーのまま前半が終了した。
早速、スコアの計算をしてみると、
何故か
「61」という数字がはじき出された。
「えっ、61!?」
俺は、自分の目を疑った。
「だって、OBは一つもないし、池ポチャだって、ロストだった無いのに、
どうして61なんだ!?」
確かに、ドライバーショットのミスは無かった。
しかし、
「フェアウェイキープ」という課題が残っていた為、
第2打目、第3打目のショットにとても苦戦を強いられていたのだった。
特に酷いのは、
アプローチでの距離感。
せめて1ピン以内、いや3メートル以内にはボールを寄せたいと思っていたが、
これが全く近づきもしなかった。
この影響で、パットも大幅に乱れに乱れて前半のパット数が
「20」
その中には
「4パット」というスコアも記録されていた。
紅葉に染まり始める妙高山を目の前にして、
後半のプレーに臨んだ俺。
「とにかく、パット数を減らさなければ・・・」
アプローチと、ファーストパットの距離感を意識してプレーを進めて行ったが、
最後の最後までこの感覚がバッチリ合う事が無く1日のラウンド終了してしまった。
後半のスコアは
「52」、パット数が
「19」の合計
「113」。
「今日こそは100切り!」と強く誓ってスタートしたものの、
あまりにも残酷な結果がこの日も俺に待ち受けていたのだった。
しかしこれは、
今まで練習を
「スイング中心」で行ってきた代償だろう。
「アプローチが寄せきれない」のは以前からも問題ではあったが、
まさかパットまでもこんなに下手になっているとは、
さすがの俺も意気消沈の姿で、表彰式の最中ずっと背中を丸めて落ち込んでいた。
むらコンペまで、3週間。
俺は今まで行ってきた練習を再見直しする事を心に誓って、
このコンペ会場をあとにしたのだった・・・。
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