旅の終わりで

アマゴルファー・むら

2014年07月28日 20:30

俺の、「自分をゼロから見つめ直す旅」
そろそろ終わりに近づいていた。

思い出の場所をフラフラと徘徊しながら、
スライサーからチーピニストに変貌したスイングの原因究明に取り組んでいるが、
コレと言った手応えはまだない。

しかし、
いつもでもこんな根なし草の様な、
フテーンの寅の様な生活を過ごしているワケにはいかない。

夏が始まったばかりだが、
集中して練習しなければアッ言う間に秋が訪れ、
そして雪と共にシーズン終了になってしまい、
俺はまた「アナの世界」に舞い戻る事になるだろう。

風の向くまま気の向くままと旅を続けていた俺は、
「なぜ、ボールが左右に曲がってしまうのか?」
の答えを求めて最後にたどり着いた場所も、
やはり、懐かしい思い出の場所だった。




「長野京急カントリークラブ」

この場所を訪れるのも約4年ぶり。

目の前には、
長野オリンピックが開催された「飯綱山」がそびえている
緑豊かなゴルフ場だ。










「今日はラウンドは、クラブを振り切る事だけに集中していこう・・・。」

もう、アレコレ考えても結果が良くならないのは分かっている。
だから、目の前のボールを打つことだけを考えて、
オンプレーンスイングだとかアウトサイドとかインサイドとか、
「ボールの位置はココで・・・」とか、
「しっかり前傾を取って・・・」とか、
「頭を残してボールを最後まで見続ける・・・。」などと色々と考えるのは止めて
気持ち良くクラブを最後まで振り抜いていく事だけに意識を向けようじゃないか。

俺が探し求めている「ゼロから見つめ直す」の答えは、
もしかしたら、身体が動きやすいように無意識で勝手に動くその領域に
何かヒントがあるかも知れないと感じたのがその理由だ。


今回も、
高原特有の涼しい風と、
初夏の青空が大きく広がっていた。







スタートのミドルホール、
俺の無心のドライバーショットは、
久しぶりに真っ直ぐ飛んでいた。

「おぉ~、これはイイそ!」

思わず歓声を上げてしまった俺だが、
やはり、フェアウェイにボールがあるって本当に気持ちがイイ。

この爽快感があるからこそ、
俺はきっとゴルフを止められずにいるんだな。

続く第二打。グリーンまで残り150Yのセカンドショット。
7番アイアンで再び無心のスイング。
なんとパーオンしてしまった。

おぉぉぉ~、やれば出来るジャン。俺!

こんなに上手くボールが打てたのは、
一体どれだけぶりだろうか?

俺は、思い通りのショットが打てた嬉しさを感じながら、
フェアウェイを堂々と歩いて颯爽とグリーンに向かって行った。


ボールはピンの上に付いていた。
残り距離約2m。
下りの少しスライスラインだ。

「ファーストパットだから慎重に行こう・・・」

今までの俺なら、「これはバーディーで行くゼ!」と気合十分だったが、
今日は「無心のスイング」と決めている。

心から湧き上がってくる欲を捨て、
さらに余計な事を考えずに一打一打に集中する。
そうさ。2パットで入れてパーで上がれば、
それだけでも十分過ぎる出来栄えだ。

芝目があるグリーンだが、
スタート前に「飯綱山から順目ですよ」と聞いているからそれは問題ない。
後はタッチを合せて寄せるのみ。

しかし、ベストタッチで打ったファーストパットは、
思いっきりのカップオーバーだった。

「えっ、どうして!?」

大きく動揺してしまった俺。
どうやら、順目の下りを少し甘く見ていたようだ。

返しのパットも残り2m。
微妙な距離だが、ラインと芝目は既に分かっているので
落ち着いて打てば問題ない。

ゆっくりしたリズムで2回目のパットを打った。


「げっ。ショート!?」

今度は逆目にボールが食われて、
カップの手前30cmでボールが止まってしまった。

心の中の動揺はさらに広がっていたが表情は冷静そのものを装いながら
「じゃあ、お先に。」と残りのパット打った俺だったが、
ボールを左に引っかけてカップインにはならなかった

ガーーーーーン・・・!

と、ショックの鐘が頭の中に大きく響き渡っていた。

パーオンしながら、なんと4パットを叩いてしまった俺。
チーピンもスライスもキツイが、
スタートホールでの4パットもとてもショックが大きいという事が
身に染みて分かった。


もう、こうなってしまったら、
ヤル事はただ一つ。

「ビールを飲む!」事だけだ。






この「長野京急カントリークラブ」は、
途中の茶店でドリンクが飲めるのだが、なんと全て無料で飲める。

しかも、「アルコールまでOK!」という太っ腹さだ。

ラウンド途中でアルコールを入れるなんて事は全くしない俺だが、
「ビール無料!」しかも「飲み放題!!」となればちょっと事情が変わってくる。

無制限に飲みたいところだったが
時間も無いので2杯だけで我慢をしておいた。


前半終わってのスコアは、「51打」
パット数が「15」
スタートホールのショックをその後払拭して、
無心のスイングを行った結果はかなり良かった。

懸案事項のボールの曲りもほとんど少なく、
久しぶりに好感触を感じた前半のプレーだった。


美味しいランチも腹いっぱい食べて
「この調子なら、「求めている答え」を見つけられるかも知れないそ・・・。」
とほんの僅かな希望を胸に、
俺は意気揚々と後半のプレーに臨んで行った。









後半、徐々にボールが左右に曲がり始めたが、
それでも何とかOBにならずに持ちこたえていた。

アイアンショットもライの悪い所ばかりからだったが、
欲を捨てた無心のショットのお蔭で何とか事なきを得て
後はアプローチとパットでしっかりリカバリーしていた。

後半のプレーを終えてスコアは「53打」
パット数が「16」という結果。
旅の中では、一番スコアが良くて一番パットも決まったラウンドだった。

「一体、何が良くて左右の曲りが抑えられたんだ?」
その答えをハッキリ言い切ることは出来ないが、
どうやら、チーピニストからの脱却が近づいているそんな兆しは
何となく感じていた俺だった。


そして俺は、
スコアカードの隙間に小さく

「無心・無欲」

と書き込んで、
長野京急カントリークラブを後にしたのだった・・・。

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