徘徊の旅

アマゴルファー・むら

2014年07月20日 21:31

人は、自分を見つめ直す時、
「昔の思い出の地を訪れる習性」があるらしいが、
俺もご多分に漏れずに懐かしい場所を徘徊していた。


「確か、この場所へ来たのも
4,5年前だった様な気がするな・・・。」


信州の北の地、
リンゴ畑に囲まれた山岳地帯にひっそりと佇む憩いの場所に
俺はたどり着いていた。





「斑尾高原カントリー倶楽部」

確かこの場所には、
ゴルフを始めて間もない頃にコンペでやって来た思い出がある。


当時の事をハッキリ思い出すことは出来ないが、
山岳地帯にありながら平坦なフェアウェイが広がっていて、
ゴルフ初心者にとてもフレンドリーなコースだという印象が残っている。

そう、平らで広いフェアウェイという事は、
ボールをどこに打とうがライが良いという事だ。
だから次の方程式が成り立つと言っていい。

ボールが曲がる + 広くて平らなコース = 「安心!」

例えボールが右に左に曲がっても、
ボールがコース内にありさえすれば何の心配もなく次の打球を刻めるこの安心感が
今の俺には必要なのだ!


青く澄み渡った初夏の空の下、
早速俺は、クラブハウスに足を踏み入れた。











知人に誘われたラウンドだが、
「オープンコンペに参加しているからね!」と突然言われてしまった。

ハーフ集計の
「第2回 斑尾オープンコンペ」


今やズタボロの俺。
こんな状態でコンペに参加しても賞をゲット出来るハズもない。
ましてや、不様な成績を参加者全員に公開されて赤っ恥をかくのがオチだし、
さらには「ブービーメーカー」という不名誉な賞をゲットしてしまった日には、
ただでさえ傷ついている身体と心は、もう二度と立ち直れない深い傷を負う事になるのは分かっている。

しかし、もしこの安心のフェアウェイで本来の自分を見つけられたら、
俺の旅はここで終了して復活した姿を希望の光として悩めるゴルフ初心者たちを導くことが出来るだろう。

俺は、練習場でボール打ち込みながら血液中にアドレナリンを噴出し
モチベーションを上げてティーグラウンドに向かった。









緊張の第一打目。
俺は迷うことなくドライバーを手に取って振り切った。

しかし、チーピニストの姿は健在だった

飛距離も出ていない。
グリーンまで338ヤードのミドルホール。
俺のボールは、150Y先の左のラフで止まっていた。

でも、ライは良い。
50Y先にはクロスバンカーが広がっているが、
7番アイアンで軽く振り抜けばグリーン手前まではボールを運べる。

ラフの状態をしっかり確認してスイングした俺。


「あっ。」


トップボールが飛び出して、
ボールは目の前のバンカーに入って行ってしまった。

しかし、こんな所で落ち込んではいられない。
ボールは真っ直ぐ前に進んでいるし、グリーンにも少し近づいている。
そしてラッキーな事には、バンカーのアゴは低い。
力みのないハーフスイングで軽く打てば、問題なく脱出できるのは俺でも理解できる。

「落ち着いて、落ち着いてゆっくり振っていこう・・・」
と、心の中で自分に言い聞かせてスイングしたが、
結果は、これ以上ない渾身の力がこもった空振りだった。


悲しかった。
こんな時、全身に力が入るのを分かっていながら、
それをコントロール出来なかった自分がとても悲しかった。

しかも空振り。
思いっきりフルスイングの空振りだった。

俺は、その場に泣き崩れそうになりながらも
次のスイングをした。


「あ”っ!」


シャンクだった。
しかも、同伴者のいるカートの方にボールが飛び出すシャンクだった。

「ファぁぁぁぁぁ・・・・・・」と叫んだ俺の声は、
涙で震えていた。


今回のラウンド、左を嫌がれば右。
右を嫌がれば左と傍若無人のボールはもう修正のしようがなかった。

途中、奇跡的に「快心のストレートボール」が一発飛び出したが、
なぜこんなボールが打てたのかは分析不可能だった。


のどかな田舎の香りがほのかに漂う中、
俺の徘徊は終了したのだった。







反省しかすることがない俺。
こんなに広く平らなフェアウェイでも、
俺の心は安心ではなく「常に不安」を感じ続けていた。

前半のスコア「56」、後半のスコア「52」
パット数が「17+18」の成績だった。

こんなスコアで当然、入賞している訳もないが、
あの「不名誉な賞」だけは避けなければならないと
オープンコンペの結果を確認した俺。

すると、
なんとブービー賞ゲットの結果が発表されていた。






俺は、
コンペでゲットしたバームクーヘンを車でかじりながら、
眼から流れる汗を拭う事もせずに
再び自分探しの旅に出発した。

甘いはずのバームクーヘンが、
何故かしょっぱい味がしてたのだった・・・。

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