雪辱

アマゴルファー・むら

2014年05月26日 18:00

名門ゴルフ場と名高い「長野カントリークラブ」でのラウンド、
俺は5年前の雪辱を晴らすために朝一番のドライバーショットを放った。

516ヤードのロングコース。
目の前には、真っ直ぐ続くフラットな広々としたフェアウェイが広がっている。

ティーグラウンドからはまだグリーンは見えないが、
とにかく両側の林にボールを打ち込む事だけは避けなければならないホール。

狙いはもちろんフェアウェイのセンターだが、ラフにボールが行っても構わない。
スタートホールのティーショットを無難にこなす事が、一日の調子を決める鉄則なのだ。

同伴者に加えてキャディーさんの熱い視線も注がれて、
俺の身体も周りの空気もピシッと固まっている中、俺はドライバーを振り切った。


バツン!
ビューーー!



クラブヘッドにしっかり弾かれたボールは、
青く澄み渡った信州の空に向かって飛び出して行った。

「ナイスショット!」の心地よい掛け声が
ティーグラウンドに響き渡る。

ボールは右に少しカーブを描きながらも
フェアウェイに向かって飛んで行ったのだった。

「ふぅ・・・。良かったぜ・・・。

何度経験しても緊張する朝の第1打目。
これを無事にやり遂げた俺は、
緊張から解き放たれた身体を緩めて大きく息を吐いた。

「うん。今日はイイ感じだぞ・・・。」

この調子なら、今日のラウンドはスコアアップ「100切り」の期待が持てる。
俺は、キャディーバックからクラブを3本取り出して、
第2打地点に向かって軽やかにフェアウェイを歩き出した。
ボールは、フェアウェイを外れてラフに止まっていた。

ボールのライは悪くない。しかし、目の前にはフェアウェイバンカーが大きく行く手を阻んでいる。
グリーンまでの距離はたっぷり250ヤード以上は残っていた。

ここは一度、打ちやすい8番アイアンくらいでフェアウェイに戻した方がイイのか?
いや、ボールもしっかり芝の上に浮いているし、目の前のバンカーの顎も高くない。
やっぱり、Fwで打って出来るだけグリーンまでボールを近づけたい。

そして俺は、クリークを手に持ちスイングした。


「アっ!?」

トップボールを打ってしまい、
ボールはコロコロと目の前にバンカーに入っていった。

「あちゃ・・・」

一番やってはイケナイ事をやってしまった俺。
折角、ドライバーをまともに打っても、
これでは何の意味も無いではないか。

しかし、この時点でヘコたれている場合じゃないのは理解している。
こんな事はいつも通りの事だから、とりあえずバンカーから脱出することだけに集中しよう。

7番アイアンで軽くスイングしたボールは、
見事フェアウェイに飛び出して行った。


それでも、
グリーンまでの残り距離は200Yは残っていた。

再びクリークを手に取り、
最初のミス「トップボール」の修正点を頭に描いてアドレスを取った俺。

なぜトップボールが出てしまうのか?と言えば、
俺の原因は二つある。

1つは、
「しっかり体の前傾を取っていない事」
もう1つは、
「飛ばしてやる!」と力んでスイングしてしまう事だ。

いつもここぞ!と言う時に必ず全身に力が入ってしまう事は、
ゴルフを始めて以来の「悪い癖」だが、
6年経った今でも修正することが出来ていないのが実情なのだ。

しかし、挽回する第3打目がある。

今日のラウンドで注意するポイントは分かった。
後は、落ち着いてスイングするだけだ。

「えっ!?」

今度はハーフトップだった。

あれだけ意識してスイングしたのにも関わらず、
またしても確実なインパクトをすることが出来なかった。



グリーンにボールが乗るまでに、6打も掛かってしまった俺。
しかし、これで終わったワケではない。
さらにはこの後、「芝目」という強敵がココに潜んでいる。

俺は、まずは一度自分で傾斜と芝目を読んでみた。


「上り傾斜で少しスライスライン・・・。
 芝目は、逆目だな・・・?」


このコースは「飯綱山から順目」とキャディーさんから教えてもらっているから、
山の位置を確認すれば読み間違いする事はないハズだ。

俺は、自分の読みが合っているかどうか?
キャディーさんに確認してみた。


「そうですね。」


Yesの返事に冷静な気持ちを取り戻し、
距離感だけを合せてパッティングした俺。


カツン。コロコロコロ・・・

「ナイスタッチ!」

カップの手前5㎝でボールが止まってしまい、
一打のパットでカップインすることは出来なっかったが
タッチはしっかり合っていた。

「よしっ!
グリーンの読みとタッチは合っているから、
今日は強気のパット攻めて行くぞ!」


スイングで気を付ける事は分かった。
グリーンは俺に合っている。

後は、1打1打に意識を集中し、
「一球入魂」のドカベンになってプレーしていくだけだった。


前半のプレーが終了して、「54打」
パット数は「18」

50Yのアプローチで「2回連続OB」を出してしまった事が悔やまれるが、
後半は1パットを決めることが出来れば、決して「100切り」夢ではない状況だ

俺は、暖かな陽気で緩んできたフンドシを締め直して、
後半のプレーに進んで行った。









この日もドライバーショットは良かった。
前半に比べてボールの曲がり方が大きくはなったが、
それでもOBになることは一度もなかった。

俺のスコアが崩れる一番の原因は、
ドライバーでOBを出すことだが、
それは、今回も一度も起きていない。

グリーンでは、相変わらず「惜しいパット」を続けている。
途中のミドルホールで、パーも1つ取っている。
自分でも、納得の行くプレーを続けていた。

全てのプレーを終了し、
ホールアウト後にスコアを計算すると・・・、

後半「57打」、パット数「18」
合計「111打」と言う結果だった。


調子は良かったが、上り3ホールで
「バブルパー」「ダボ」「ダブルパー」
を叩いてしまい今回も100切りは、
俺の手元からスルリと遠くへ消えて行ってしまった

長野カントリークラブのコースは、
俺が雪辱を晴らすことを最後でしっかりガードしていた。

「また、チャレンジしてやるから待ってろよっ。」

と、負け惜しみの言葉を精一杯吐きながら、
俺は名門ゴルフ場を後にしたのだった・・・。


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