米山水源カントリーでのバックティーからの挑戦。
俺は、遠く離れたグリーンを見つめてティーショットのイメージを描いていた。
「大丈夫。あれだけ練習してきたんだから、
きっと上手くいくさ・・・。」
3か月に渡ったスイング改造では、
ひたすら
「上体の捻転差」だけをマスターすることに意識を注いてきた。
もし、この動きの一部でも身に付いているのなら、
飛距離は確実に伸びているに違いない。
きっと、目の前に広がる池は軽々と越えて行くだろう。
そうさ。バックティーからプレーしたって、
距離の長さを感じて
「俺にはまだ無理だった・・・。」と挫折感を打ちのめされる事も無いハズだ。
「とにかく、自分を信じて打って行こう。」と心の中で呟きながら、
俺は無心でドライバーを振り抜いた。
ビュン。
ガツン。
ボチャ!
チーピンで飛び出していったボールは、呆気なく目の前の池に飛び込んで行った。
「いきなりコレかよっ。」
池を超えるまでには100ヤード打てば問題が無かった。
それなのに俺のドライバーショットは、Pwで打つよりも飛んでいない。
この現実を一体どう捉えればイイのか?
「こっこれが、バックティーのプレッシャーなのか・・・?」
果てしなく遠くに見えるグリーンに、
「飛ばさなきゃ!」という意識が働いて
力が入ってしまったのは誰の目にも明らかだった。
第1打目から、俺の試練は始まっていたのだった。
県アマ予選会へに向けての練習ラウンドを兼ねているMオヤジは、
そつないプレーを進めていた。
1打目にフェアウェイを外していても、2打目をラフからグリーンに乗せてくる。
仮に2打目がグリーンに乗らなくても、アプローチでは確実に1ピン以内にボールを運んで、
「パー」か
「ボギー」で納めていた。
俺は、半分悔しがりながらその上手さの秘訣を探ろうと
Mオヤジのプレーを注視していた。
その中で分かった事が一つあった。
それは、
「Fwの使い方が抜群に上手い」という事だった。
やはりバックティーから打つとなると、どうしても第2打目には180ヤード以上の距離が残る。
例えば、俺がこの距離を埋めるには、5番アイアンかもしくはUT、Fwを使う必要が出てくる。
でも、6番以上のアイアンはほとんど練習してなし、
Fwに限ってはまともにインパクト出来た試しがない。
ドライバーと同じく、右に行ったり左に行ったり、トップ、ダフリの連発だ。
これが俺の現状だが、Mオヤジは違った。
1打目にミスをしても、Fwを持てばそれがカバー出来ていた。
飛距離、方向性、弾道のどれをとっても
ナイスショット!を連発出来ているのだった。
前半のプレーを終えて、俺のスコアは
「69」
どう見ても
バックティーからプレーするレベルでは無いのはここでもハッキリしていた。
本来なら、この悔しさをビールを飲んで晴らすところだが、
あいにく俺にはまだ医者の許可は出ていない。
しかたなく水で我慢をしてランチをさっさと終わらせて、
直ぐに練習場に向かった。
「こうなったら、午後のプレーまでに矯正してやる!」
と、時間が許す限りボールを打ち込んだのだった。
その甲斐あってか、
後半のプレーは見違えるような打球が連発していた。
ドライバーショットも、Mオヤジに引けを取らないホールがいくつもあったし、
パーを記録するホールもあった。
何より一番良かったのは、常に
「オナー」でティーショットを迎えていた事だった。
後半9ホールの内、オナーを渡したのはわずかに1回のみ。
後は全て俺が始めにティーショットを打っていたのだ。
きっとこれは、Mオヤジにしてみれば
「屈辱」以外の何物でもなかったと思うが、
俺にとってはまさしく
「名誉」そのものだった。
そして、後半のプレーが終わってスコアを計算した俺は、
自分の目を疑った。
「えっ、46!?」
まさか、数え間違いじゃないだろうな?
でも、ほとんどオナーやってたし、パーだって2つ取ってるし、
そー言えば、ボールも1個しか無くなってないし。
マジですか、コレ!!
思いがけないビックスコアに驚いていた俺だったが、
同伴者一同もビックリしていた。
それは、そうだろう。
レギュラーティーから回っても
100切りすら出来ない俺が、
バックティーから回って後半
「46」だなんて。
前半のプレーと後半のプレー、一体何が違って何が良くなったのかは
実のところ良くは分からない。
しかし、ただ一つ言えることは、
「シングルプレイヤーへの道」は、
確実に近づいているかも?と言う事だ。
そして俺は、
僅かな自信を感じながら、
この
「米山水源カントリークラブ」を後にしたのだった。