罠
最近、やっと確かな手応えを感じてきた俺は、
今月2回目のラウンドに行った。
場所は、
「菅平グリーンゴルフ」
日本一高い場所にあるこのコースは、
真夏でも平均気温が25度以下というとても涼しい場所なので、
俺も避暑を求めて毎年この時期に行く事にしていた。
当日は曇り空だったせいか、
涼しいを通り越して肌寒さを感じる陽気だったが、
今の俺にとってはそれが返って好都合だった。
なぜなら、
「ベストスコア更新」に向けた手応えを掴んで気分も身体もアゲアゲになっていたので、
この火照った状態をクールダウンさせるには丁度良かったのだ。
俺が、
今日のプレーで意識すべきポイントはもうハッキリしている。
とにかく
「OBを出さない事」
これさえ出来れば、
間違いなくスコアが更新出来ると過去のデータからも明らかになっているし、
さらに、今回一緒にプレーする同伴者の面々にも、
俺の出来栄えを確信できる状況が揃っていた。
クラブチャンピオンにも輝いているSさん。
毎年、県アマに出場しているMさん。
そして、信州レディーズ競技会で第3位になった事もあるS嬢。
この3人の強者たちに囲まれてのプレーなら、
彼らのリズムが
嫌でも俺に移ってくるだろう。
と言う事は、
当たり前の様にパーを取り、
バーディーチャンスを連発し、
時には
「イーグル!?」なんていう場面も訪れるかも知れない。
もはや俺には、
「ベストスコア更新して当たり前」の状況が全て整っているのであったのだ。
素晴らしい景色と、高原の爽やかな風に包まれて、
俺はティーショットを放って行った。
前半が終わってのスコアは
「51」。
パット数は
「16」。
いつもながら第2打目のショットが安定していないが、
それでも何とかポイントの
「OBを出さない事」は守っていた。
「よしっ!この調子で後半に勝負を掛けるぜ!!」と、
ランチを腹いっぱい食べながら
改めて心に誓う俺。
しかし後半に、
「とんでもない罠」が俺を待ち受けていた。
なんと、
霧が発生!
あたり一面真っ白な霧に覆われて、
1m先ですら全く見えない状態になってしまったのだった。
1年に一回程度のプレーでは、
例え俺と言えども、ホールロケーションを熟知する事は出来ない。
なので、どこを狙ってどの方向にボールを打ち出してイイのか全く分からなかった。
ましてや、スライスにフックという
「曲がり球」を得意としている俺は、
どこにボールが飛んで行ったのかを見る事が出来なければ
ゴルフ自体が成り立たない可能性が高い。
そう、打ったボールが
「全てロストボール」となる危険性があったのだ。
やはり、
嫌な予感は的中した。
霧で、全く前が見えない中でのプレーは、
「ロストボール3つ」を記録した。
この記録は、俺の歴史を塗り替える
「世界新記録」となった。
後半のスコアは
「56」で、パット数は「15」。
俺の確かな手応えは、
霧が晴れて行くと共に、はかなく消えて無くなってしまったのだった。
「OBを出さない事だけじゃダメなんだ。
しっかりフェアウェイに打って行かなければ・・・」
俺のチェック項目に、
「ロストボールもダメ」と
しっかりと書き込まれたのは、もう言うまでもないだろう・・・。
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