最後のコンペ
その日は、前日の雪がまるで嘘のように晴れた日だった。
俺はいつもの様に、
朝食のバナナを食べながら車のエンジンを掛けて空を見上げた。
「良かった、晴れて・・・。」
そう今日は、
今シーズン最後のコンペが開催される日だった。
空は青く澄み渡っているが、やはり気温は低い。
目の前に見える山も、うっすらと白くなっている。
この信州では、もうそこまで冬がやって来ているのだった。
後何回ゴルフが出来るか分らないが、多分コンペはこれが最後になるだろうと、
この寒い時期でも参加を決意した俺だったが、しかし、理由はそれだけではなかった。
このコンペは、年に一度の恒例行事。
嫌でも参加しなければならないのが掟になっているの加えて、
俺が今シーズン約1年掛けて練習してきた成果をみんなに見せつける
最大のチャンス
でもあった。
既に職場の中では、
「練習しているけど上達しない」
「ゴルフの事しか話さないけど上手くない」
「プロに教えてもらっても100を切れない」は有名になっている。
そんな噂を、
根も葉もない話を、
東スポの記事のような話題を打ち消すには、
やはり生の姿を見てもらうのが一番だ。
俺は、今年の5月からず~っとゴルフスクールに通い、
プロからスイングの基本と身体の動かし方を学び、
有り余る時間と有り余らないお金の全て費やして練習してきたんだぞ。
「うわぁ~、すごい飛んでるよー!」
「えっ。べたピンじゃないの!」
「ナイスバーディー!!」
って、みんなが驚く声が聞こえてきそうだぜ。
俺の心は熱く燃え上がっていた。
参加者のみんなが続々と集まってくる。
俺と同じ組で回るのは、HさんとYさんの二人。
彼女らも、以前俺が通った
「アップルラインゴルフセンター」で、
山口プロのレッスンに入って腕を磨いてきたという。
これは負けるわけにはいかない!
卒業生であるこの俺が、今生徒の二人に何が何でも負けるワケにはいかない!
俺の心は、さらに熱く熱く燃え上がっていったのだった。
参加者のみんなが見つめる中で、俺のティーショット。
俺は、
今までかつて
見せた事がない打球を披露しようしたが、
飛び出したボールは、自分でも今までかつて
見たことがないチョロスライスだった。
Hさん、Yさん二人して、
素晴らしいティーショット放っている。
そして、
俺の今シーズン最後のコンペが幕を開けたのだった。
To be continued.
関連記事