激変

アマゴルファー・むら

2013年10月22日 21:40

「この後半9ホールに、全てを賭けるぜ・・・。」

俺は、OUTコース1番のバックティーに立ち
グリーンを見つめて心の中で小さく呟いた。

「第6回むら感謝還元コンペ」の後半戦のスタート。
前半のプレーが、「OBがゼロ」「13パット」という調子良さではあったが、
あいにくのスコアは「51」と、いま一歩の状態だった。

しかし、過去5年年間から今日この日に至るまで、
常にどん底の底辺を漂っていた俺としては、これ以上下がる事は考えられない。
通常で言えば「上昇する」というトレンドしか残っていないので、
当然のごとく巻き返しを図り「完全優勝」へ前進することは可能性として極めて高い。
とは言っても、この予測不明な「一寸先は闇」の世の中、
この後一体何が起こるか分からないのは既に過去の経験からも理解していた。

「今、長野駅にいます。これから会えませんか?」とのメールに浮かれたり、
「友達とカラオケBoxで待っていますね!」との誘い文句にうっかり乗らず、
「ホテルで私のストレスを解消してください!!」なんて愛のメールに喜んでいたら、
間違いなく「大変な事態に発展する」現代社会では
どんな状況にも細心の注意を払う事が必要なのだ。

さらに、後半のプレーのリスクを考えれば、
もしダメになったしても底辺以上に下がる事は物理的にもあり得ない。
悪くたって「現状維持」という結果、「転んでも今まで通り」なのだから、
後半のプレーは「攻めて攻めて攻めまくる!」しかないだろう。
そうさ。これが男、アマゴルファー・むらの心意気ってヤツなのさ!



ドライバーでのティーショット。
前半と同じく右曲りのスライスだった。
しかし、OBにはなっていない。
右の前には池があるが、花道へレイアップして第3打目でグリーンを狙えばボギーで上がれる。
しかし、ライの状況が良かったのを見て、
俺が手に取ったのは5番ウッド、クリークだった。

「上手く行けばグリーンに届く距離だな。でも、ハーフスイングでOKだ・・・。」

そう自分に言い聞かせてスイングしたが、
何故か渾身の力がこもったフルスイングになっていた。
そしてボールは勢いよく右に飛び出し、池にポチャンと飛び込んで行った。

「しゃ、シャンク!?」

不思議な事に、ここぞ!という時に限ってシャンクが飛び出すのは
ゴルフを始めた当初から続いているが、この原因は5年たった今でもまだ解明されてはいない。

「落ち着け、落ち着くんだ・・・。
まだ始まったばかりじゃないか・・・。」


大きく深呼吸をして第4打目を打ち直したが、
ダフッてショートしたボールがグリーンオンしたのは、第5打目。

「まぁいいさ。下りのラインだけど2回で納めればOKさ・・・」

しかし、このラウンド初めての3パットを叩いてダブルパー。
まさしく波乱のスタートだったのある。


続く2番。谷越になるロングホール。
ドライバーで打ったボールが、谷へのグッバイショットになってOB。
しかし、特設ティーから打った第4打目はグリーン手前の絶好なポジションに付いた。
ここはアプローチで、軽く寄せて無難にホールアウトするところが、
信じられない事にまたシャンクが飛び出した。
しかも、真横にいた同伴プレイヤー「ス~さん」の方へまっしぐらに飛んで行くではないか!

「ファーーーッ!!」

素早い反射神経でボールをかわしたス~さん。
危ないところで難を逃れていた。
そして、俺が大声を張り上げて叫んだ声は、
いつまでも木霊となってホール全体に響き渡っていた。


終わってしまった。
俺の今後のゴルフライフを占う大事なラウンドが、
後半のスタートと共に終わってしまった。

しかも、むらコンペのホストである俺が、
参加者に「殺人シャンク」を打つという東スポの見だしになってもおかしくない、
完全完璧な終わり方だった。

青く澄み切った空と綺麗に整備されたコースは、
いつまでも俺の目の前で光り輝いていた・・・。






表彰式会場のコンペルーム。
待望の結果発表が行われるのを、
今か今かと待つ参加者たち。
たくさんの賞品が並べてあるのを前にして、
それぞれのプレーを振り返って、話に花を咲かせていた。









このコンペで100切りを果たして、ドラコンニアピンをゲットして、
おまけにべスグロまで獲得する「完全優勝」を狙っていた俺だったが、
結果は「第7位」「111」というスコアでプレーを終了していた。

パット数も後半「18」で、合計「31パット」

今回新しく設けた「パット王」の賞品も、
べスグロを獲ったタカセルさんに持っていかれてしまった。

最後に、
参加者全員で記念撮影。





俺の賭けは「凶」と出てしまったが、
参加者みんなと笑顔で「また来年ネ!」とグッバイ出来た事は「吉」だろう。


そして俺は、
二つの選択肢を胸に抱えて、
「第6回むら感謝還元コンペ」の会場を後にしたのだった。


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